久遠なる白銀
これは銀色の髪と真紅の瞳の小さな姫君の物語。 この物語はある小さな出会いから始まった。 敵として彼女の目の前に現れた黒髪の青年。 彼は戦場という舞台で幾度となく彼女と相対した。 幾度の衝突を経て敵味方を超えて惹かれ合う二人。 家族という安らぎすらも最近まで知り得なかった孤独だった少女。 天涯孤独でその生き方しか知らないと言う青年。 とても近い、そしてとても遠い存在。 拒絶される事への恐怖心から、少女は他人へ心を開く事に怯えていた。 拒絶される事が当たりと考えていた青年とは対照的。 けれども、彼女は怯えた心を晒してまで彼と向き合った。 これ以上、大切な物を成す術もなく失いたくないから。 心を閉ざすよりも、胸に秘めた想いを伝えて傷つく事を選んだ少女。 戦場で彼女は傷つき、倒れ、力尽きる。 だが、寸前で彼に想いを伝える事を彼女は成し遂げていた。 彼はそれに対して本心から戸惑った。 彼女の好意は、それまで敵意しか見えなかった彼に衝撃を与えた。 彼女が自分と一緒にいたいと心から願っていた事に・・・。 死の危機に瀕してまで、それを伝えてくれた事に心が揺れた。 そして、奇跡は起きた。 彼は戦いに傷つき、死に瀕していた彼女を窮地から救った。 それは、孤独な彼の心を救ってくれたと感じたからに他ならない。 必死に自分と向き合ってくれた幼い少女への感謝の印。 彼は彼女の為に戦う事を決意し、祖国と袂を別つ事となる。 それ以来、彼は彼女の為に存在する。 彼は彼女の兄であり、サムライでもあり、恋人でもある。 常に傍に寄り添うように存在する。 ただ彼女のためだけに・・・。 |