『ニコイチ戦線』

 

『新規参加の方々こんにちは、当戦線に初参加される方は必ず集会に参加して下さい。』

 

 正規軍の補充戦力が到着したその日、昼飯時の基地内にこのような放送が流れた。

 この戦線では切迫した戦局のせいか非常識な事が毎日起こっている。

古参の面子は慣れてしまい問題ないのだが、新規参加の人達はそうもいかない。

この常識差の問題を解決するための集会が開かれようとしていたのだった。

 

「当集会を仕切らせてもらう村雨楓だ。ページの関係上ささっと進める。」

 

 白衣を着込んだ女性が有無を言わせず集会取り仕切る。

 

「まず敵味方の主力機種を覚えてもらう。これが敵、そんでこれが味方。」

 

 でかでかとボードに張られた資料を指で指し示しながら説明する村雨。

 提示されたものを見せられて新規の連中はざわつき始める。

 その反応は村雨にとって予想の範疇内であり、楽しげにその様子を観察していた。

●敵主力機種

「ヴァルキリー」「エンフォーサー」「シャドホD型」「ライフルマン」「ジャガーメック」

●自軍主力機種

 「ブラックハウンド」「カメレオン」「パンサー」「ジェンナー」「ドラゴン」

 反応的には「敵味方の表示が逆なんじゃなかろうか?」とか「カメレオンはないだろう。」

とか、常識的には非常にごもっともな意見が飛び交っていた。

 

「ふむ、新規参加の諸君らには信じられないだろうがこれが現実だ。」

 

 冗談でも間違いでもない、当戦線はこの戦力配置で今のところ落ち着いてしまっている。

 

「まあなんだ。戦局が泥沼化して補充がおっつかなくなった結果である。」

 

 消耗した戦力を後方からの補充なしで回復させる手段といえば一つしかない。

 

「お互い拾った物を直して使いまわしていたらこうなったと言う訳さ。」

 

 戦場において鹵獲、または撃破した機体部品を回収し、戦力とするための自活戦法。

 壊れた二つ以上の機体を繋ぎ合せて再生する『ニコイチ』時代の到来である。

 それを双方で行った結果、主力の機体が丸々入れ替わるという珍事を引き起こした。

味方のはずの機体が敵となり、敵のはずが味方である現状。

このややこしい状況は新規参加者が頭を痛める最たる理由の一つとしてあげられる。

頭では解っていても、体が勝手に反応して誤射という事例が少なからず起こる事となる。

 

「それは置いといて、カメレオンを馬鹿にするな!フェニホとガチンコできる良い機体だ。」

 

 ニコイチ再生の反応よりもそっちの方に村雨は積極的に突っ込みを入れ始めた。

 使えないからと部品取り用として捨て置かれていた練習機のカメレオン。

それが、フルカスタムされて優秀な高機動メックとして生まれ変わっているらしい。

新規の彼らは知らないが、それが村雨の自信作だと言う事を後々知ることになる。

まあ、それは別の話ということで・・・・。

 

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